今年出版がされた写真紀行本『VALU TUDO』
表紙を見る限りゴリゴリの格闘技本のイメージ。
ページをめくっていくと抱いたイメージの通り格闘技の本場ブラジルの事情がこれでもかと詰まった内容。
多数のカラー写真を眺めていると、暑さと喧騒溢れるブラジルにいる様な感覚になる1冊。
読了をしたので早速レビュー。
目次
著者の井賀孝氏
この『VALE TUDO』の文章を書き写真撮影をしているのは井賀孝氏。
1970年7月21日和歌山市生まれ。写真家。
高校時代はアマチュア・ボクシングに没頭し、大学卒業後に独学で写真を始める。
27歳のときニューヨークで出会ったブラジリアン柔術を契機に“闘って撮る”写真家の道を志向。
その後、たび重ねてブラジルへ通うなかで多くの総合格闘家たちと交わり、2002年に『ブラジリアン バーリトゥード』(情報センター出版局)を上梓。
数年後、ふたたび自身の視座を日本に置くと同時に、各地の山を登るようになり、
2009年、日本人独自の山との向き合い方に惹かれるまま修験道の世界に身を投じる。
山伏として過ごした約3年間の日々を描いた、『山をはしる-1200日間山伏の旅』(亜紀書房)は各メディアで大きく取り上げられ、
2013年には世界遺産吉野の金峯山寺にて写真展を開催。
2014年『不二之山』(亜紀書房)、『すべての山を登れ。』(淡交社)を出版。
同年、國學院大学博物館 特別展「富士山-その景観と信仰・芸術-」に出展、好評を博す。
現在も大峯山などで山伏修行を続けながら、さまざまな媒体において格闘家やスポーツ選手、アーティスト等の撮影にあたる。
トライフォース柔術アカデミー池袋本部道場にて柔術の指導者としても活躍中。
経歴を見るだけでも幅広い分野に渡り活動をしているのが分かります。
格闘家、柔術家だけあり取材先のジムでは毎回の様に井賀氏も練習に参加をし合間に写真撮影とインタビューを敢行。
そのため現地ブラジルの取材相手も共に汗を流した相手にリラックスした上で、心を許して話をしている印象。
取材相手により全4部に分かれる内容
『VALE TUDO』は全4部に分かれる内容。
最初の2部はPRIDEなどの大きなリングで活躍した格闘家にフォーカス。
後半2部はブラジルの田舎のジムと古豪の格闘家、町田嘉三に密着。
4部全て全てブラジルでの取材。
関連:ブラジリアン柔術の本場ブラジル。そのブラジルに行ったおはなし。
・クリチバ:シュートボクセ
まずはPRIDEで大活躍をしたヴァンダレイ・シウバが在籍をしていたシュートボクセの取材。
話は2006年の取材時と2016年の取材の2つの時間軸で展開。
クリチバは私も同じく2006年に訪れた事があるがブラジルの中でも非常に景観の良い街。
アスファルトの道路もキレイに整備がされており、ゴミなども目に入る事があまりない美しい場所。
そんな街で荒ぶるファイトスタイルで一世風靡をしたシュートボクセの本部があるのが何とも言えぬ感覚を憶える。
・リオデジャネイロ:ペケーニョ
かつて修斗のリングにおいて『ギロチンチョーク』で数々の強豪を倒したペケーニョ。
そのペケーニョへの取材が第2部。
こちらも一部と同様に過去の取材と2016年の取材の2つの時間軸で展開。
過去の取材時にはペケーニョの自宅に居候し、移動は毎回ペケーニョのバイクの後ろに乗るなど取材という枠を飛び越えた仲。
少年のような童顔で生活のためにファイトをし、両親に仕送りをしていたペケーニョの現在の生活が分かる貴重な内容。
かつて修斗のリングでの活躍を見ていた身としてはペケーニョの最近の生活が分かり嬉しくもある第二部。
・ボア・ビスタ:ブラジル最北の柔術道場
1部、2部と異なりこちらは2016年の取材のみで時間軸は進む。
ブラジルの奥地であるボア・ビスタに足を運び2つの柔術道場で練習と取材に参加。
とにかく辺境の場所で現地に到達するまでにもとにかく大変。
サンパウロやリオと違い英語が全く通じず何とかガイドを通じてアポイントに成功。
迎えに来てくれた現地のジムの代表はギャングの様な風貌(180cm、100kgの巨体!)で車内は言葉が通じないので全く会話がないという緊張状態から道場へ向かう。
読んでいるこちらまで緊張感が伝わる内容。
とにかく現地に飛び込み練習に参加するフットワークの軽さに驚き。
・ベレン:町田嘉三
4部はベレンに飛びコンデコマこと前田光世の墓参りに行く話からスタート。
前田光世の墓を守っているのが世界最高峰のMMAイベントであるUFCで活躍をするリョート・マチダの父である町田嘉三という驚きのスタートから話は展開していく。
何より興味深いボア・ビスタの道場
1番興味深い内容だったのが3部のボア・ビスタの道場話。
2つの道場に行くのだがホライマ・トップチームに行く話が非常におもしろい。
まずあまりにもアクセスが悪い場所なので、他の文献でこのような田舎の場所の柔術道場の練習などを読む機会はまずない。
コミュニケーションを取るのも一苦労の状態から共に練習をして打ち解けていく流れは読んでいてとても爽快。
同じ格闘技を愛する者同士、結局一緒に汗を流せば自然と距離が近づくものなのだ。
また著書の井賀氏は黒帯を巻く柔術家。
10代の若いブラジリアンに次々スパーリングを挑まれるも黒帯のメンツにかけて負けられない心理面の描写も柔術家としてはあるあるで興味深い。
まとめ
数多くのカラー写真と共にブラジルの多数の道場の様子を垣間みれる『VALU TUDO』
柔術家や格闘家、またブラジル好きにはぜひとも読んで欲しい1冊です。
また井賀氏は他にも多数の書籍を書いています。
こちらの『山をはしる』も『VALU TUDO』と同様に著者自身が山伏修行に身を捧げた密着レポで非常に面白いです。
関連:やるのも楽しいですが、読むのも楽しいです。活字格闘技のセカイ。
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